11月 282013
 

2013年11月23日(土)から12月27日(金)まで武蔵野市立吉祥寺美術館で開催中の森山大道写真展「モノクローム」。森山大道の写真展は都心部での開催が多く、多摩地区での開催は珍しいかと思われます。吉祥寺、井の頭公園へお出かけの際に、立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

ちなみに少々下世話ですが、武蔵野市立吉祥寺美術館は入場料が100円とお得。気軽に立ち寄れる美術館として、吉祥寺に根付いております。以下、今回の写真展と森山大道の街歩き写真について、特に写真はよくわからなーいという方に、概要を語りたいと思います。

今回の写真展は、2008年から撮りためた東京のスナップ写真約60点で構成されます。森山大道といえば1960年代に粒子が粗く強コントラストのブレ、ボケ写真という前衛的な写真表現で一時代を築きました。その後も特に東京・新宿を中心に街のスナップを撮り続けており、今や日本写真界の重鎮、至宝ともいうべきスゴいお方。

巨匠・森山大道に街歩きを学ぼう

一般的に森山大道の写真は「難しい」と言われますが、それほど深く考えなくても楽しめます。いや、むしろ考えずに感じたまま楽しんだ方がよいでしょう。ものすごく簡単に言ってしまえば散歩疑似体験、あるいは「街を楽しく見る方法論」くらいに思ってもいいかも知れません(言い過ぎ?)。

例えば知らない街を初めて歩いたときに味わう高揚感。街の雑踏と自分の感情が溶け合い混じり合ったような時に、脳裏には次々に脈絡のない映像、イメージが浮かび上がると思います。そうした興奮状態、覚醒状態で切り取った街のイメージの断片というのは、その時の自身の精神状態とリンクしているはず。

写真というのは、その時の感情を鮮やかに切り取り定着させる魔法の機械なわけですが、森山は自身の写真について撮影時の高揚感を認めつつ、「写真は最終的には記録に収れんされる」と言い切ります。

どういうこと?

主観と客観 思い込みと冷静さと

写真は時間の経過とともに、その時の撮影者の心情のようなモノが薄れて剥がれ落ちて、写された対象物だけが残り、客観的な記録として浮かび上がります。森山はこの感覚を大切にしているようで、時とともに撮影時とは違う姿が見えてくることこそが、写真の強度、面白みだと考えているようです。

街を歩く時の高揚感と、その感情によって視野が限定され、見落とされがちな看板、ポスター、落書き、壁、建築物、そして歩く人々などの些末な都市の生活感、ディテール。高揚感とともに切り取った風景には、確かに言葉に出来ない「何か」があったはず。ただ歩くだけでは見えなかったその「何か」が、残像のような白昼夢のような写真の中に、写っているのかも知れません。

森山の視点を借りて東京という都市の見方、触れ方をもう一度プラクティス(練習)してみるのも楽しいかも知れません。きっと、観賞後の吉祥寺の街も違って見えるはずです。

森山大道「モノクローム」展
開催期間:2013年11月23日(土・祝)〜12月27日(金)
休館日:11月27日(水)、12月25日(水)
入場料:100円
住所:東京都武蔵野市吉祥寺本町1-8-16 FFビル(コピス吉祥寺A館)7階
電話:0422-22-0385
URL:http://www.musashino-culture.or.jp/a_museum/exhibitioninfo/2013/10/post-115.html

※12月7日(土)14時から15時30分には森山大道と編集者・神林豊による対談「モノクロームの魅力」も開催されます。先着90名、美術館入場券が必要。電話、美術館窓口にて申し込み受付中。

▼こちらは「新宿+」。2002年に発売された名写真集「新宿」に新たな写真を大量に加えた文庫版。新宿を撮らせたらやっぱりスゴくいい。

8月 032013
 

最近奄美諸島関係の仕事を手伝っているので奄美の存在を気にしていたら、写真家・管洋志の素晴らしい写真集「奄美~シマに生きて」に出会いました。観光ガイドブックを見るよりも、これ一冊をじっくり見た方が、よほど奄美の姿が理解出来るように思います。

■美しいけれどどこか哀しい…奄美の風景

一般的に奄美群島は琉球・沖縄と混同されがちで(行政区域は鹿児島県)、「南国リゾート」「エメラルドの海と白い砂」的なイメージを持たれている方も多いと思います。確かに海は美しいしマングローブも島唄もあるし、そこまで間違ったイメージではないのですが。

奄美群島の歴史はなかなかに複雑です。琉球、薩摩藩、そしてアメリカと、時代のうねりの中で支配者がコロコロ変わり、島人は苦しい生活を余儀なくされてきました。そうした悲哀の歴史の名残なのか、どこか陰影のある独特の文化や風景が形づくられ、今に伝えられています。

■管洋志の「人間写真」

写真家・管洋志は「人間写真」をテーマに掲げアジア各国、特に東南アジアを中心に、滾る(たぎる)ような人間の生活の風景を写し続けてきました。管の写真は一言でいえば「生々しい」。

例えば奄美の無邪気な小中学生の写真。溌剌としていて、人間の生の感覚に溢れているなあと思って見ていると、ズボンが汚れ、穴があいていたりします。あるいは中学生男子の生えかけのヒゲ、つながりかけの眉毛が、毛穴ごと目に飛び込んできたりします。

同様に石垣の朽ちたディテール、植物の産毛、筋肉が落ちた老人のスネ、親戚縁者の集まりの席、夜の帳(とばり)に細々と灯される家の明かり、特攻隊の記憶など、「亜熱帯」「南国」という言葉から連想される陽のイメージとは違う、ざらざらとした生活の姿が切り取られています。

写真集巻末の文章も、奄美を知る手がかりとして面白いものでした。島では車ですれ違う時に頭を下げて挨拶する(たとえ知り合いでなくとも)など、実際に島に行かなければ体感できないようなエピソードも。

旅に求めるものは人それぞれ違うとは思いますが、例えば現在の生活を見直し一度リセットしてニュートラルな気持ちになりたい時などは、奄美群島はいいかも知れませんね。まだまだ記号消費的な観光が浸透していない島だと思うので(それでいて面積、人口とも大規模な群島)、ゆっくりと巡る甲斐があると思います。

関連記事
奄美琉球居酒屋・土濱笑店で新名物「パパイヤもずくキムチ」に出会う
奄美群島しーまブログ 奄美の食・酒・旅行情報はここで集めよう
奄美伝統発酵飲料「ミキ」を体験。好き嫌いが分かれるらしいけど美味しかったよ?

5月 232013
 

朝日新聞朝刊の社会面に「スカイツリー開業1年」に関する記事。一周年を記念して、この一年間に点灯された12色のライトアップを10分間隔で見られるとか。

記事は、ややお決まりですがスカイツリー開業一年の悲喜こもごもについて触れていました。やはりお膝元の地元商店街は軒並み売り上げがダウン。中には売り上げが半減した店もあるそうです。

■開業バブルも去り、地元商店街は苦しい日々

開業当初はスカイツリー内商業施設「ソラマチ」のあまりの混雑ぶりに客をさばききれず、はじき出された人たちが地元商店街で食事や買い物をする光景が見られました。しかしその混雑もだいぶ落ち着いてきて、当初予想されていたように「ソラマチ」の一人勝ち、地元商店街まで客足は流れなくなってきているようです。

■屋形船や東京タワーは需要増

逆にスカイツリー効果で好調な業種の紹介もされていました。近くの隅田川の「屋形船」、一大観光地浅草からの「タクシー代わり」の需要がある人力車「時代屋」、それに「東京タワーからスカイツリーを眺める」という予想外の需要が発生している東京タワー、そして遠く東武伊勢崎線つながりで栃木の「日光」などが恩恵を受けているようです。
浅草吾妻橋からのスカイツリー他の眺め
▲浅草吾妻橋からのスカイツリーの眺めは東京新名所。アサヒビールの「炎のオブジェ」「ビールジョッキ」と相まってキッチュな景観を創り出しています。観光客が驚きとともに写真を撮る、記念撮影ポイント。

「富士山は登るよりも遠くで見た方がキレイ」なんてよく言われますが、スカイツリーに関しても、直下より少し離れたビュースポットに恩恵が出ているように思います。上の写真、吾妻橋や屋形船、水上バスが活気づく浅草周辺がその典型。

■「地獄よ。」 店のお母さんの言葉が耳を離れない

まだスカイツリー建設中、日々ニョキニョキと高度が上がっていた時期に、地元商店街を歩いた時のことを思い出します。スカイツリーほぼ直下、小さな総菜等を扱う昔ながらの商店でお店のお母さんと立ち話をしました。

当然の如く、スカイツリーの話題に。お店のお母さんは「あんな大きな物ができちゃって」「これから毎日見なければならないのよ」「地獄よ」。周囲の商店と同様、店の売り上げに対しての心配(というより諦め)をするとともに、変わってしまう町に不安を覚えていたようです。
建設中のスカイツリー
▲建設中のスカイツリー。ここから高度三倍増。
この当時はあそこまで巨大に生長するとは思わなかった笑
スカイツリー建設中
▲建設中のスカイツリーは日々、町の人に見守られていました。映画「三丁目の夕日」で伸びゆく東京タワーに人々が胸を躍らせた時と同じです。しかし、あまりに巨大(なぜかダジャレで武蔵=ムサシにかけて634メートル)に育っていくので、次第に「おいおい、ホントに大丈夫なのかっ?」という声も。

■スカイツリーは希望の星なのか

スカイツリーの登場により対岸の浅草は活気づいているし、朝日新聞によれば東京向けのツアーも好調だそうです。広域の目線ではスカイツリーは閉塞感のある東京という都市の希望の星でもあります。

あちらを取ればこちらが立たない。商店街の栄枯盛衰は、企業努力といえばそれまでかもしれません。それでも「地獄よ」という言葉の響きが僕の心の中にずっと残っていて、青空に映えるスカイツリーを見るたびに、少し心が痛みます。

関連記事
浅草観光・散歩のおすすめスポット10個 お土産から水上バス、芸人の町六区まで
東京スカイツリー『隅田川デジタル絵巻』
無線lan・コンセント・授乳室・浅草寺一望展望台!便利な浅草文化観光センターを利用しよう
明治時代のAKB選抜総選挙?浅草凌雲閣の百美人【歴史秘話ヒストリア】
2ヶ月有効!「ぐるっとパス」ってお得かも 無料、割引で都内77の美術館・博物館・動物園に入場できるチケット集
レトロでディープな浅草地下商店街は戦後東京の文化遺産 観光のついでに面白空間を体験しよう
初デートは浅草の神谷バーで電気ブラン(だったらしい) 東京の東側が賑やかだった頃の残り香
浅草は今でも演芸・お笑いの町【浅草演芸ホール・東洋館・浅草公会堂・芸人行きつけの店】
浅草・仲見世のおかしな東京土産を調査①「神風ハチマキ」から「ゆるキャラキーホルダー」まで充実の品揃え
浅草・仲見世のおかしな東京土産を調査②外国人向けの面白みやげ 食品サンプル・仏像フィギュア・日本刀まで