1月 042014
 

東武鉄道が東武野田線の愛称を「東武アーバンパークライン」というナウでヤングな名前にするという知らせに触発され、日本全国の「ユルめ」な名称の鉄道名称・愛称を集めてみました。

参考記事:東武野田線の愛称がアーバンクライン、間違えた、アーバンパークラインに決定

平仮名系の名称ってついつい「ダサいなー」などと思ってしまいがちですが、中には創意工夫を感じる名称も有り、こうした鉄道呼称を眺めてみると日本各地の鉄道が置かれている現状が見えてくるかも知れません。

▼「ほくほく線」は黒字続きでローカル鉄道の希望の星。懐具合もほくほく(なんつって)
Photo By: gtkn

あきた♥美人ライン(秋田内陸縦貫鉄道の愛称)

つのだ☆ひろ方式の命名。これは営利企業として突き抜けていて、ちょっとアリな気も(笑)。乗ってみたくなります。僕も色白美人には弱いですから…。

あまくさみすみ線(JR九州・三角線の愛称)

熊本県の宇土駅から三角駅に至る「三角線」の愛称。つまり、「天草三角線」ということらしい。「あまく=さみすみ」と読んでしまいました。音感はいいので秋田風に「あまくさ♥みすみ」にしてみるとか(ごめんなさい)。

ごめん・なはり線(土佐くろしお鉄道の愛称)

これは有名ですよね。高知県の「後免駅」と「奈半利駅」を結ぶ鉄道の愛称。駄洒落テイストのインパクトのある名前で、覚えやすいかも。平仮名でインパクトを与えられた後、漢字はどんな?と気になってしまう。

つくばエクスプレス(首都圏新都市鉄道)

秋葉原駅とつくば駅を結ぶ、2005年開通の新しい路線。もともとは「常磐新線」の名称で建設が進められていました。首都圏ではすっかり「つくばエクスプレス」の呼称で定着した感があります。駅名も「みらい平」「みどりの」など平仮名系有り。みらい平は味蕾平かと思い込んでいました。

りんかいサンライン(南海高野線の旧愛称)

1995年から2008年まで、難波駅~橋本駅間で付けられていた名称。結局定着せず。歴史ある真言宗の本拠・高野山に向かう路線だけに、抵抗はありますよね…

ドラゴンレール大船渡線(JR東日本・大船渡線の愛称)

勇ましすぎる名称で何事かと思いましたが、路線経路の形が「竜」のような形をしているところから付けられたとのこと。東日本大震災で沿線は甚大な被害を受けました。「ポケモントレイン」を走らせるなど、頑張っている地方路線です。似たような「片仮名+地名」タイプの命名として「はまなすベイライン大湊線」(JR東日本・大湊線=青森)もあります。こちらは沿線の風景を路線名にパッケージ化。

森と水とロマンの鉄道(JR東日本・磐越西線・会津若松駅~新津駅間の愛称)

ドイツへのパッケージツアーっぽい名称で、一体どこの路線なのか見当も付かなかったのですが、福島から新潟の山深くを抜けていく磐越西線・会津若松駅~新津駅間の愛称だそうです。僕個人の感覚としては、「磐越西線」の方が旅情をかき立てられて好きかな…。

ほくほく線(北越急行)

新潟県の六日町駅と犀潟駅を結ぶ北越急行の路線。1997年開業の新しい路線で、地方私鉄としては珍しく、毎年数億円の黒字となっています。越後湯沢から上越、富山方面へ抜けるショートカット路線として重宝されています。「ほくほく」は計画時の名称「国鉄北越北線」を略したもので、「北越急行ほくほく線」が正式名称。

けいはんな線(近畿日本鉄道)

長田駅から学研奈良登美ケ丘駅までを走る、近鉄の一路線。近鉄直営の東大阪線が母体となっています。けいはんなは「京阪奈」のことらしい。相互直通運転をしている大阪市営地下鉄中央線との総称として「ゆめはんな」という名称もあります。「京」→「夢」への変化が謎ではあります。

E電(国電に代わるJRの旧愛称)

もう四半世紀も前のことを掘り返してしまう粘着ぶりで申し訳ないのですが、あまりに浸透せず、どうにも面白いので。1987年に国鉄が民営される際に、東日本旅客鉄道が「国電(国鉄電車)」に代わる新しい名称を、とのことで公募により決めた愛称。「EにはEast、Electric、Enjoy、Energyなどの意味が込められている」とのこと…。いや、笑ってはいけませんね。当時は真剣に決めたことですし。その後、「JR(ジェイアール)」という呼称が国民に浸透したのは、周知の事実。

1月 042014
 

東武鉄道が大宮~柏~船橋間を結ぶ野田線の愛称を「東武アーバンパークライン」と命名すると発表しました。アーバン=都会的な、パーク=公園ですので、都市公園線っていう感じの意味でしょうか。

これ…まあ、いろいろとツッコミはあるでしょうね。のどかな近郊路線である野田線を「アーバン」と呼んでいいのか問題(沿線地域性が表現されていない)、それに字面が読みづらくアンバーバー?アンバークライン?などと読み間違えてしまう問題など、なかなか脇が甘いネーミングな気もします。

地味なアーバンパークライン

関東以外の方にはわかりずらいかも知れませんが、野田線は都心部周縁を走る電車。ターミナル駅の船橋、柏、春日部、大宮等を通る重要な路線なのですが、基本は郊外の農地と住宅地を通る、何とも地味な路線です。「パーク」に関しては、沿線に大きな公園が多いとの理由での命名のようです。

▼アーバンパークライン・藤の牛島駅。By: urawa

横文字系愛称でイメージアップを狙う東武鉄道

東武鉄道は浅草から群馬へと走るメイン路線・伊勢崎線を「スカイツリーライン」、旧業平橋駅を「とうきょうスカイツリー駅」と名付けるなど、イメージアップ戦略(?)を打ち出しています。いずれ東武東上線にも横文字系の愛称が付けられるようです。

しかし、東武伊勢崎線春日部駅経由で東武野田線に乗り換える場合、「東武スカイツリーラインで春日部駅から東武アーバンパークラインに乗り換える」となるわけで、かなりカオス。

鉄道路線名に「キラキラ」は有りか?

昨今、土地の記憶を消し去る「平仮名ゆるふわゆとり地名」や、子どもに複雑怪奇な名前を付ける「キラキラネーム(旧称・DQNネーム)」などが何かと話題に上ることが多いと思います。全国で続々誕生する鉄道名称・愛称に関しても、賛否両論様々な意見があるようです。

ただし鉄道路線に関しては、公共性はありながらも基本的には営利目的のために存在しており、地名や人名の事例とは少し事情が違うとも考えられます。最終的には呼称に最低限の公共性が確保されていれば、あとは好き嫌いの問題になるのかも知れません。

次の記事では、日本全国に続々生まれている「ユルめ」な名称の鉄道名称・愛称を集めてみました。僕個人としては、表意文字である漢字の利点を生かした鉄道名のほうが風景も立ち上がるし、格好いいと思ったりもします。しかし、中には創意工夫を感じる名称も有り、こうした鉄道呼称を眺めてみると、日本の鉄道が置かれている現状が見えてくるかも知れません。

次の記事:キラキラネーム?名コピー?イメージ戦略系鉄道路線愛称10ヶを集めてみた

8月 272013
 

「新しい日本地図」(高井ジロル著・アートン新社)という、少々柔らかめな本から。

この本は、日本全国にある地名を集めてマッピングして「遊んで」います。ん?どういうことか。具体例を挙げた方が解りやすいので、ピックアップするとー。

▼フルネームマップ

「北沢類子=きたざわるいこ」「造田是弘=ぞうだこれひろ」「狐崎次郎=きつねざきじろう」「東花子=ひがしはなこ」「米谷清シ=まいたにきよし」

これ、人名じゃなく地名です。北沢類子から順に、宮城県(北沢)、香川県(造田)、宮城県(狐崎)、徳島県(東)、兵庫県(米谷)で実在する地名です。

▼Google Mapより、香川県さぬき市造田是弘。地図を拡大すると造田是弘さんが現われます。


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▼口語とかマップ

「しっかり=尻労(青森県)」「なんじゃい=南蛇井(群馬県)」「あらま=安楽満(岐阜県)」「あたた=阿多田(広島県)」「あっそ=且来(和歌山県)」「ヲヲット(東京都大島)」

しっかりしんさい!あらまー。など、日常口走ってしまう言葉のようですが、これらも地名です。「なんじゃい」「あたた」「あっそ」辺りは漢字変換でバシッと出てきます。

こんな感じで文化人類学的なしっかりとした地名の分類ではなくて、あくまで著者の遊び心でキーワードごとに、面白地名を集めて地図にしております。小学生男子が大好きな地名「スケベニンゲン」(Scheveningen:オランダ)「エロマンガ島」(Erromango Island:バヌアツ)でウヒャウヒャ笑うの巻、の大人版みたいなものですね。ちなみに最近の地図ではエロマンガ島は「イロマンゴ島」と表記されているらしく、どこかしらからの圧力があったのではと勘ぐってしまいます。

▼全国の小学生男子憧れの島、エロマンガ島改めイロマンゴ島。名前とは裏腹に、哀しい歴史を持つ島でもあります。
エロマンガ島の食人部族の子孫、170年前に先祖が食べた宣教師の子孫に謝罪


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そして僕が気になったのが「美女マップ」。

▼美女マップ

「美女高原(岐阜県)」「美女峠(福島県)」「美女池(兵庫県淡路島)」「美女平(富山県)」「美女塚(長崎県対馬)」「美女ケ脇(愛知県)」…

おお…。こんなにも地名に「美女」が残されているなんて。やはり日本の歴史上には数多の美女伝説があって、ご先祖様も美女には滅法弱かったのか。これが安倍氏が言うところの「美しい国、日本」ということか…

ちょっと日本の国土を見直しかけたところですが、実はこの「美女」という地名。湿地帯などで泥濘(ぬかるみ)のあるところを「ビショケ」「ビショビショ」というらしく、それが転じて「美女」になったものが多いとのこと。

女性の酸いも甘いも経験した成人男子(自称)としては美女が泥濘・ヌカルミだなんて、(いい意味で)その通りじゃないかと思うわけですが、残念ながら漢字は後付けの当て字なんですね。「美女」なんてロマン溢れる地名が付いた場所では、当然その風景を見ている人たちの想像力がかき立てられるわけで、時とともに人々の心の中に新たな美女伝説が形成され、その土地の風景とリンクされていきます。

美女高原を訪れた男性諸氏の胸に生まれる「美女伝説」のように、地名には日々新しい付加価値が加わっていきます。京都もエロマンガ島も六本木もセントレアも、地名が生まれた瞬間の思惑とは違う方向に、それを使用する人たちの手垢にまみれて、次の世代へと手渡されていきます。それもまた、地名の面白さではないでしょうか。